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大田祥子先生にセブンサミッツ達成を捧げて

私が祥子先生と初めて出会ったのは、2002年秋、ヒマラヤのチョー・オユー峰に登ろうという公募登山隊に参加した時でした。
「大阪国際女子マラソンを2年連続完走して・・・」という自己紹介に度肝を抜かれ、私自身マラソンランナーでしたので、そのお言葉に「この人、ただ者じゃない!」と強烈なインパクトを受けたのを覚えています。
その後、記念病院を設立されたことを伺い、医療人としても人並みはずれた活動をされてきたことを知り「ただ者じゃない!」との思いをますます強めました。
また農場を持ち無農薬の作物を育てられていることなども冗談を交えながら面白くお話しくださりその人間性の魅力にも新たに気づかされたのでした。
人間性といえば祥子先生は他人の悪口を決して口にせずその様な会話の場にも加わろうとしない方でした。
高所のキャンプ生活が続くと常には大らかな心持ちではいられず、つい気持ちがすさんでしまったりすることもあるのですが祥子先生は言動に粗野なところが全く無く、私などはその後姿を見て深く反省・勉強させられたものです。
そういうお人柄のせいでしょう、単に医師の資格を持った人ということだけでなく皆が健康や体の相談を持ちかけ、時には他の登山チームからも声がかかったり、中には自分の登山を続行するか否か最終決定の際、祥子先生のご意見を最優先にされる人もいました。
このような他人に対しての慈しみ・やさしさを持った方でしたが、ご自身に対しては常に厳しい姿勢で臨まれていたようです。
どの旅でも同様でしたが、出発の際には皆の迷惑にならぬよう誰よりも早く準備をし、食事の時の準備・配膳・給仕・後片付け等も率先してやられてました。
その自分を律する常人離れした芯の強さを思い知らされたのはチョー・オユーの山中8000mあたりでしょうか。
肩関節を脱臼されたにもかかわらず泣き言一つ言わず登山を続行、そして登頂してしまったのですから。
チョー・オユー登山の後、南極・ビンソンマシフとヒマラヤ・チョモランマと2回、海外への旅をご一緒させてもらいました。
南極でもチームドクターとして活躍され皆の精神的支柱としての役目を果たされてました。
ご自身、指先を凍傷にやられ、私がその指をマッサージしていると「高橋さんの愛情が伝わってくる。この愛情が治してくれるんよね」とのお言葉、この人の患者になった人は一生この人についていくんだろうなと思ったものです。
天候不順の停滞日に食堂テントでダンスが始まったりすると自分のテントから這い出し参加しに行く等知的好奇心が旺盛なところも見せられてました。
チョモランマの旅でもその存在感は大きく、祥子先生がいてくれることで皆の安心感が増大したことと思います。
事前に我々のチョモランマ行きのことについて祥子先生と私の実名が新聞に載ったこともあり同行させてもらうのは私にとってはあたり前のような感覚でした。
旅の途中、私のことが話題に上った時に、「高橋さんほどやさしい人はおらんよ」とおっしゃってくださったことは「高橋さんは一生ボケることは無いと思うよ」とのお言葉と共に今も強く心に残ってます。
あるキャンプ地でテントをご一緒させていただいた時、次のような会話がありました。
「高橋さん、チョモランマが終わったらセブンサミッツどうなさる?」。
「全く考えない訳じゃないけど・・。祥子先生トライするんですか?」。
「う〜ん・・、でも家族にはこれが最後と言うとるし・・」。
「祥子先生、毎回そう言ってんじゃないですか」(笑)。
「そうなんよ〜」(笑)。
この時は「あ、祥子先生やりたがってるのかな」程度にしか気にしませんでした。
この会話が記憶に蘇ったのはチョモランマの後、デナリ(マッキンリー)に登り帰国した時です。
祥子先生が果たせなかった夢を、チョー・オユー〜ビンソンマシフ〜チョモランマと文字通り苦楽を共にさせてもらった私が祥子先生の代わりにと決心したのです。
セブンサミッツをやろうとした動機の中で最も大きなものの一つが祥子先生に対する想いでした。
今、これを記している私の目の前に一枚の写真があります。
それはセブンサミッツの7番目の山となった南米アコンカグア峰の山頂でのスナップで私が写っています。
その山頂でのスナップの中、私の手に握られているのは祥子先生と一緒に写っている南極での写真です。
私のセブンサミッツ達成を大田祥子先生に捧げます。

高橋和夫

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